せっかくなのでこの話も書いておこう。
先日わたしのご近所の(といっても二つ隣の区ですが)のお店のブログにこんな記事が上がっていました。
hodogayamockcenter.hatenablog.com
この手の話、たしかにわたしも思ったことがあります。
携帯電話会社は巧みにスマートフォンデビューを勧めるのですが、そもそもガラケーで事足りている人にスマートフォンを勧めることはよいことなのか?混乱のもとになるのではないかと。
実際わたしも、普段やっているパソコン相談で、「スマートフォンになって早々、基本的な使い方が分からなくて困っている」という人の相談を受ける機会がありますし。
ただ、よくよく考えてみると、このごり押し、言うほど悪いものではないのかもしれない と最近思っています。
子どもにスマートフォンに「させられる」親
昨日の記事にも書いたのですが、ガラケーを使っている高齢親は「子どもにスマートフォンにさせられる」ということがあり得る。
実際それのせいか、子どもに「頼むからスマートフォンにしてくれ」と無理矢理スマートフォンにさせられたけど使い方が分からない という人の相談は、ときどきあります。
別の次元に生きる人たち - 高見知英のかいはつにっし(β)
特にある程度高齢の方にとって、スマートフォンは「持つことによって、本人より周りの人が助かるもの」になります。ガラケーだと電話とSMSくらいしかできなかったものが、様々な連絡手段が取れるようになる。必要なら居場所を通知してもらうこともできる。
そもそもが連絡の少ない したとしても都合の悪い時間に電話連絡をしてくる親が、LINEなどのテキスト連絡手段で連絡してきてくれる と思うととても子どもとして気が楽になります。
ただ、子どもがちゃんと設定をするかというと・・・
ただ、ちゃんと子どもが設定をして、使えるように教えるかというと、そうでもなかったりするようで。
スマートフォンにしたけど電話の受け方が分からない(通知バーの開き方が分からないので、通知を開いて通話を開始できない*1 )とか、そもそもロック画面から動けないとかいう人も少なくない。そしてそういう人から必ず聞くのは「息子/娘に聞いても教えてくれなくって」という言葉。
まあ、使うのと教えるのは別のスキルだとは思うものの、ちょっと勝手すぎないか と思うところもあるのですが、まあ、その家の家庭事情を知っているわけではないので、こちらからはなんとも言えず。
一番酷かったケース
個人的に聞いてて一番酷かったケースは、Freetel(当時)のスマートフォンで通話ができない と言われたケース。
見ると電話アプリが設定で無効になっていて、代わりにIP電話アプリがインストールされていた。
たぶん「Freetelの電話だと通話料がかさむから」という理由で子どもが設定したんでしょうが、そのへんをちゃんと親に説明していなかった(あるいは、親が理解していなかった)。
そして親は電話番号としてSIMカードに設定されたほうの電話番号を言いふらしてしまって… という感じだったと思われます*2。
親の決定権
そして、こういうときに親の決定権って、あまりないケースがあるようです。
以前わたしが、「周りの人と情報交換などをする気があるのであれば、らくらくスマートフォンは買わない方がいいですよ」という話しを「親」の人に話したときもそうだった。
結局子どもが「今はもうそんなことなくなってるらしいから問題ないらしいよ」と、半ば強引にらくらくスマートフォンにしてしまったそう(そして本人は結局そのことについて悔やんでいる)。
どこの家庭もそうではないようですが、一定のタイミングから、「子の方が立場が上になる家庭がある」のです。知っている側と知らない側が対等な立場なら、対話でどうにかなるかもしれないですが、立場が対等でない場合は、正論のほうが押し切られてしまうことがある。
こういう「最悪な形でのスマートフォンデビュー」を、わたしは何度も見てきました。
話しは戻って、携帯電話会社の話し
そこで話を戻して、携帯電話会社のスマートフォン推奨施策の話し。
携帯電話会社が(子どもがそう思うより先に)高齢親をスマートフォンにさせるというのは、そういう「最悪な形でのスマートフォンデビュー」を防ぐ可能性があると思っています。
多少なりともショップ内でスマートフォン教室をやったり、ある程度はちゃんとしたサポートをしてくれるから(まあ、そこからあぶれた人たちをたくさん見ているので、それもあまり信用できないといえばできないのですが…)。
少なくともMVNOの通信回線で、IP電話を入れられて・・・というような、真に最悪な形でのスマートフォンデビューだけは阻止することができる。
そう考えるとまだ、携帯電話会社にスマートフォンにさせられるほうが幸せなのではないか と思ったりしています。
ガラホもあるにはあるけれど
そして最近はガラケーの形状で、機能的にもほぼガラケーだけど、中身はAndroidという、俗にガラホと呼ばれているような機種もありますね。
ドコモはガラケーユーザーがこれまでと近い感覚で携帯電話を使い続けられるようにガラホ製品も複数用意しているわけですが、それにも関わらず遮二無二スマホへの移行を促そうとする理由は非常にハッキリしており、それすなわちARPUを向上させたいからに他なりません。
ガラケーユーザーにスマホをゴリ押しするのは如何なものでしょうか - モックセンター のブログ
ただ個人的にはアレ、お年寄り向けのマイグレーション施策ではないように思うんです。
たとえば意外といる「タブレットを使ってるからケータイはガラケーでいい」とか、たまにいるらしい「子ども(こちらは小学校低学年の方)にケータイは持たせたいけどスマートフォンはまだ早いし」という親御さん向け*3。
だから特に高齢者には、ガラホは勧めない。実際一見高齢の方にも使いやすそうな10キーによるケータイ入力も、案外使いこなせなくて困っている という方もいらっしゃるようですし*4
携帯電話会社の思惑
もちろんどんなことをいっても、携帯電話会社の思惑は分かりません。
それこそ元記事のように通信量を増やして収益を増やしたいのかもしれないし、オプション加入を増やしたいのかもしれない。ただそれを示す明確な根拠がない以上、それは憶測でしかない。
本当の門外漢ならともかく、携帯電話のモックを販売するという、「それほど遠くない分野で仕事をしている人」が憶測でものを語るのは、よろしくないようにわたしは思います(そして、開示できないにしろ根拠があるのなら、せめてそれがあることは示唆すべきかなと)。
もちろん実際「スマートフォンにはしたけれど、子にも携帯電話会社にも相手にしてもらえなくて困っている」という人を見ると、わたしもそう言いたくはなってしまうのですが、根拠がない以上はそれ以上は言わないのが筋かな と。
ほんとうはもっと、第三者機関がスマートフォンの扱いについて話す必要があるんでしょうが…。
これだけ機種の多い中、疑問が多様化している中、なかなか展開しにくいものなのかな と思っています*5。
*1:こうやってスマートフォンにさせられる人、たいていの人はAndroidです。やはり安いからなんですかね
*2:他のアプリにはSIMカード側の電話番号が表示されるでしょうし、それでも元の電話番号に対しての電話は「応答できなかった通話」扱いで通知バーに残るので、本人は電話が使えない と思い込む
*3:実際公園を眺めているとキッズフォンの他に、ガラケーを持ってる子って意外といるんですよね。キッズフォン→ガラケー→スマートフォンというような段階が最近の家庭にはあるような感じがしています
*4:文字の確定までにタイムアウトが設定されている機種が多く、文字の入力に戸惑っている間にタイムアウトが過ぎて確定され、結局文字が入れられないという人が多い。「う」を入れたくて「あ→あ→ちょっと考えて→あ」と押した結果「いあ」と入力されてしまうみたいな
*5:まあ、NHKなどがスマートフォン講座の番組をたまにやってますが、あれもあれでUIの細かな差異を理解していない人からしたら、混乱を招くものになってしまいますしね