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12月14日のアドベントカレンダーは、ちょっといつもとは違う内容として、『 ITと障害者 』を考える 〜 障害と向き合うITの力と工夫 〜というカレンダーで書いてみようと思います。
このアドベントカレンダーは、UnleashMeetというもくもく会を中心とした活動を行うコミュニティによるもので、精神的、身体的な障害を持つ方々が集まり、自立や仕事に役立つノウハウを共有するための場を提供しているコミュニティ。現在主にDiscordで活動を行っています。
それぞれの仕事の仕方や障害との向き合い方を通じて、障害者支援におけるITの可能性をさらに広げる情報がうまれています。
活動内容と背景
わたし自身は特にこれといって身体的障害や精神的な問題を抱えているわけではありませんが、これまでに山手オープンタウンやSNSでの交流を通じて、ちょくちょく障害のある方々と話すことがあります。
山手オープンタウンについては以前SBC.オープンマイクでもご紹介しましたので、ひょっとしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれません。
また、わたしが所属するまちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.にも障害がある方々がいらっしゃいます。
こんなわけで障害というものはそんなに近くもなく遠くもないものとして向き合っている というのが今のわたしです。
こんな経験を通じて思うのは、障害に対してITができることというものはかなり多いにもかかわらず、未だ実現されていないことが多いと感じています。
ITデバイス・ソフトウェアの可能性
骨伝導ヘッドセット
たとえばわたしはいつも、骨伝導ヘッドセットを愛用しています。
これは耳の周辺の骨を振動させることで、鼓膜を使わずに音を聞くことができる というヘッドセットです。
以前、他の骨伝導ヘッドセットも使ったことはあるんですが、振動が弱かったり使いづらかったりと、結局Shokz以外では十分な性能を発揮できないなと思って戻ってきました*1。
このアドベントカレンダーの初日に矢野さんも紹介されているように、このヘッドセットは鼓膜に障害を抱える方々にも音声を届ける可能性があるものだと思っていて、実際に、このヘッドセットを使用して今まで聞こえなかった音が聞こえたと感動したという方のエピソードもどこかで読んだように思います。
Seeing AI
Seeing AIというアプリは、視覚障害者のための支援ツールです。
apps.apple.comカメラを向けた対象を解析して音声で説明するというもので、目の見えない方が家族の服装を認識するなどに利用することができます。
音声読み上げと入力
そのほかにも、わたしはブラウザの音声読み上げ機能もよく使っています。
わたしはただ自分が文字を目で追うのが面倒だからなどという理由で使っているわけですが、視覚障害や識字障害を持つ方々にとっても非常に便利なものなのではないでしょうか?
実際、自分の山手オープンタウンの知人に識字障害の方はいらっしゃいますが、スマートフォンを音声の読み上げ機能を使って便利に使いこなしているというのを見ました。
音声入力機能についても、わたし自身は苦手なキータイプを補うために使っていますが、とくに指先の自由があまりきかないと言う人には便利なんじゃないかと思います。
また、LISTENのような音声文字起こしサービスも、定型句置き換え機能もあるため文章の表現に使えるというケースもあると思います。
ブログの方でこの記事を読んでいるという人はひょっとしたら気づかないかもしれませんが、この文章だって実はほぼほぼ音声文字起こしの力を使っていますし、その他にも自分がブログ等でコメントをしているときの文章ってほとんど文字入力は音声でやっています。
これらのツールは、障害のある方々だけでなく、誰にとっても作業効率を向上させる手段として使える可能性があるのではないか と思います。
その他未開拓なITの可能性
その他にも、精神的な障害にも例えば注意が散漫になりやすいのであればそれをスマートフォンでアシストするとか、忘れっぽいのであればスマートフォンに補助ツールを入れるとか、日々の行動を音声メモなどに入力するとかそのような対処方法は思いつきます。
自閉症の人も、メタバースだったら話せるよ、みたいな話も聞きましたね。
先日その話を地域のコミュニティカフェの人に話をしたら、認知症にも使えるのかな、みたいな話も聞きました。 認知症に使えるかどうかと言われると疑問ではあるものの、正直ここについては「分かりません」としか答えようがないかなと思っていました。
自分は認知症というものが何なのかというのはあまり詳しくは知りません、ただ、それについては本当に当事者またはその身の回りの人がちゃんと見て調べないとわからないんですよね。
そうやってしっかり調べてみたら、「こういう部分には使えますね」と言うのが出てくるかもしれないし、出てこないかもしれない。
それについては詳しい人が覗いてみないとわかりませんっていうのが実情だと思います。
課題とバリア
アクセシビリティの課題
実際わたしは特にバス移動が多かった頃、そもそも下を向いているとバスを乗り過ごしてしまう場合があるので、移動中はスマートフォンの画面を読み上げるTalkBackやVoiceoverなどを使って記事を読み上げていました。
ただ実際読み上げ機能を使っていると、特にウェブサイト上の広告というものが3倍以上鬱陶しく感じます。
なぜなら全く読めないし、使えないし、何のことを言っているのかわからないのにスペースだけ存在していて、しかも誤タップすると帰ってこれなくなるので。
ウェブサイトのマークアップ不備が音声ソフトの利用を妨げることもありますし、特定の言葉が適切に読まれないケースもあります。
例えば障害。
よく害という文字をひらがなで書いていらっしゃる方いらっしゃいますが、これ障害をひらがなで書くと「さわりがい」って読んでしまう音声の読み上げソフトがあります。
そもそもウェブサイト自体がアクセシビリティだのなんだのと言われつつも、まだまだ晴眼者――目が全く問題なく見えるという人たちのためのものになっているのではないのかなと感じるところはあります。
心理的障壁
障害者本人が「自分には無理だ」と思い込むことで、ツールの利用を諦めるケースもあります。
それによって障害に対応するツールもユーザーが増えず、結果それを使わないユーザーに関するフィードバックがたまらない。
それによってさまざまなアクセシビリティ機能やそのためのサービス・ツールが伸びない。
実際先ほどの通り、識字障害があってもVoiceover機能を使って普通にスマートフォンを使えるという方はいらっしゃいますし、全盲の方がBluetoothのキーボードを使ってiPhoneを普通に使っていたという事例も聞いたことがあります。 でもやっていない。なぜならできないと思い込んでいるから。このような事例は多いように思います。
未来への提案
これについては健常者側の努力も障害者側の努力も必要になると思います。
障害者側の取り組み
障害がある人がアクセシビリティツールを積極的に使っていく、またはそういうような事例を紹介していく、発信していくということ。
さらに技術の可能性を広げるためには、障害者コミュニティ内での意見交換や、開発者との対話を進める必要があるかもしれません。
健常者側の取り組み
健常者もアクセシビリティツールを試用し、その感想をフィードバックできればよいと思います。
例えば先ほどお話をした通り、目を離さずに記事を読むためにアクセシビリティツールを使ってみるだとか、文章を入力するためにアクセシビリティツールを使ってみるだとか、そのように身近なところでアクセシビリティツールを使ってみて、その感想をあちこちに発信をしていく、メーカーにフィードバックをしていく。
例えばそのような声がウェブサイトのアクセシビリティ指針に影響を与えていったり、読み上げに不向きなページ構成を変えていくということにつながったりするかもしれません。
協力の必要性
特にウェブサイトの広告ですとか、そのようなものは現状晴眼者のことだけを考えて作られているところがあるように思います。 もっと障害がある人も嫌な思いをしない広告の出し方というものが存在するはずです。
そのようなものが今軽んじられているのではないかと感じることはあります。
そのような思いを伝えていくこと、変えていくこと、それは健常者だけではできませんし、障害がある方だけでも難しいというところはあるのかなと思います。
だからこそお互いにできることをやっていく。
それによってもっとITが障害がある人に向けてできることという範囲は広がっていくのではないかな。
障害者と健常者が協力し合うことで、ITが果たす役割の範囲が広がるというのはありそうです。
その結果、障害の有無に関わらず便利なツールが生まれる可能性があります。