高見知英のかいはつにっし(β)

高見知英のアプリケーション開発日誌 のほか、地域活動などの活動報告ブログ。

視覚障害者のIT活用

先日訳あって、進行性の病気でほとんど失明(現時点ではものの輪郭だけは把握できるけど、そのうち完全に失明してしまう)という状態の方のパソコンについての相談を受けていました。

視覚障害の方がデジタルデバイスを活用しているのなんて、ほとんどテレビやWebの動画でしか見たことがなかったので、どう話せばいいのか迷いましたが、とりあえずそれなりには相談対応ができたようで、とてもホッとしています。

わたしも最近、*1AndroidのTalkback機能を使ってニュースを読み上げさせるなどのことはしているし、全盲の方のiPhone活用事例なども見たことがあるので、なんとなく今の音声読み上げ機能でできることの概要は知っていたつもりですが、実際にこういう機会に話してみないと分からない課題って、たくさんあるなあと感じます。

いまのデジタル機器の読み上げ事情

まずは簡単におさらいすると、いまのデジタル機器の読み上げ機能は、OSごとに呼び名が違っていますができることは割と同じなのかなと思っています。

技術的には画面上のテキストや入力中文字列の読み上げ、アプリの画面上コントロールにつけられた読み上げ用ラベルの読み上げなどを行うというもの。

WindowsだとOS標準のもの以外にも、PCトーカーなど様々なソフトがあって、とくに専門的な内容を読み上げる際の専門用語の表現に大きな影響が出てくるとか。

個人的にはメンテナンスの手間が少なく、アクセシビリティ機能がAndroidに比べて発達している(という印象が個人的にある)、iPadあたりにリプレースするのがいいんだろうなあ などと思っていましたが、そうでもないんだな とあらためて思いました。

現状のアクセシビリティ機能の課題

色々話をしていると、今のアクセシビリティ機能の課題が見えてきます。

たとえばAndroidの場合。Androidの場合、Talkbackをオンにすると、操作方法が大きく変わってしまう。

具体的には、項目の選択はタップからダブルタップに、スクロールは指二本によるスクロール(最近のノートPCのタッチパッド操作みたいな感じ)になります。

しかもWebブラウザなどを表示中はピンチ操作と操作方法が近く、ピンチ操作とスクロール操作を使い分けるにはそこそこの熟練が必要(すくなくともわたしはその辺が上手くできず、スクロールしようとしてピンチズームをしてしまうということがよくある)。

なので、失明してからはじめてTalkbackオンのスマートフォンを触った という人ならともかく、スマートフォンを触ったことがあって、中途で失明した という人にはなかなか勧めづらい。

今回お話しした方は今はスマートフォンを持っていなかったものの、Android搭載のウォークマンを利用しており、そういう人にTalkbackを勧めるのはどうなのか と思ってしまいました。

かといって、今のスマートフォンは「画面を見ながら操作をしなければいけない(状態をこちらで記憶しなければならない)」という点で、とてもステートフル。失明者の利用は、Talkbackが前提になってしまうというところで、そこは難しいな と。

ただでさえ覚えることが多い状況で、これはちょっと酷かな・・・。

アクセシビリティ機能の使いづらいところ

今のネットって、Talkbackでは結構読みづらい。

  • 広告がどこにはいっているのかわかりづらく、文字情報は0な広告が少なくないため、読み飛ばすのも、読むのもやりづらい
  • サイトによってはリンクで読み上げが止まったり、リンクを読み上げできなかったりと、Talkbackだけでは使いづらい
  • 段落の切り方やHTMLタグの使い方がサイト毎に違うため、一度に読み上げしてくれる範囲がサイト毎にかなり異なる(どうもTalkbackはHTMLタグを見ているのか、サイト毎にワンタップで読み上げてくれる範囲が異なる)

Chromeブラウザ上を主にTalkbackを使っていて、「これ、視覚障害者には使えないよね?」と思っていました。

また、Android自体にも、読み上げ用のラベルが設定されているコントロールが少なく、視覚障害者がTalkbackを使って操作をするのは難しい。特に中途失明者は今までとはかなり違った使い方を強いられるだろうな と思いました。

アクセシビリティ機能を晴眼者が使うということ

わたしは前述の通り、Talkbackをニュース読み上げに使うことがあります。

最近の機種だとワンキーでTalkbackの状態切り替えができるようになっており、(恐らく使い方は機種ごとに異なりますが、)ボリューム上下キーの長押しなどの操作で簡単にTalkbackの利用が可能。

晴眼者がアクセシビリティ機能をもっと使えば、それで見えてくる課題や、改善される点もかなりあるのではないか と思っています。

こちらについては以前、SBCast.の日本Androidの会回でも話をしたことがあります。

sbc.yokohama

実際わたしも使ってみて、晴眼者がアクセシビリティ機能を使ってできることは結構あるのではないかなと思います。

ただ実際活用してみないと、アクセシビリティ機能の課題はなかなか分からない。

失明者にも晴眼者にも使いやすいアクセシビリティ機能を実現するためには、晴眼者ももっともっとアクセシビリティ機能を活用すること、アクセシビリティ機能を活用しやすいシステムを作ることが必要だな と思いました。

視覚障害者とスマートスピーカー

また、それとは別に話していて思ったのは、視覚障害者とスマートスピーカーって、結構相性がいいかもしれないということ。

スマートスピーカーは基本的に、(いまのところは)コマンド実行中以外は、常に同じコマンドを受け入れるし、動作も変わらず、とってもステートレス。

スマートスピーカーの機種によっては設定にスマートフォンが必須になってしまうなど、利用する環境が限定されてしまうものもありますが、視覚障害者には結構使えるのかもしれないな と思いました。

わたしも失明された方で、ITを活用する方とお話ししたケースがあまりにも少ないため、実際どんな活用事例があるのかは分かりませんが、機会があればちょっと調べてみたいなと思いました。

*1:読むのが面倒くさいときや、外から目を離したくないときに、