表題の通りですが、さくらWORKSにて、子ども向け簡易環境で学ぶ、プログラミングのキホンというイベントをやることになりました。
これはまちづくりエージェント SIDE BEACH CITY.のイベントの一つで、code.orgやScratchを通して、プログラミングの仕組みを学んでみようというもの。基本的に年齢にかかわらずどのような方でも参加可能なイベントとなっています。
当日の流れとしては、まずプログラミングとは何か、プログラミングで出来ることは何かといった概要説明の後、code.orgやScratchに触れていく という形になります。
パソコンはこちらで用意することが出来ないため、今回は持ち歩き可能なパソコンを持っていらっしゃる方限定になってしまいますが、興味がある方は是非お越しいただければと思います(それらは持っていないけどどうしても!と言う方は、ご相談ください)。
開催の動機など
今回のイベントは、まちづくりエージェント SIDE BEACH CITY.のNPO法人化後、はじめて開催する外部向けイベントとなります。
自分も今まで、code..orgやScratchなどの子ども向けの簡易開発環境をワークショップなどで使っていて、「これはプログラミングの流れを学習するのに使えるかも?」と考えていました。
過去に他の方法でいくつかやる方法を検討していたのですが、結果今回まちづくりエージェント SIDE BEACH CITY.のイベントとして開催することになった という形になります。
自分は常々書いているとおり、プログラミングというものは、子ども向けに学習の場を作ればそれだけでいい というものではないと思っています。
環境を作るために親の理解が必要だったり、学校の先生や地域の方々のたすけが必要だったりと、子どもを取り巻く大人たちにもそれなりに理解をする機会が必要になるものです。
たとえば分かりやすいところでは、プログラミング向けのパソコン。
- あまりに貧弱なパソコンではそもそも開発環境が動かない(or まともに動かせない)ので、最低限のプログラマ向けパソコンのスペックについて理解しておく必要がある
- パソコンのOSによっては、そもそも開発環境が動かない(Chromebookでは開発は出来ません*1 )。
- 開発環境によってはiフィルターなどのフィルタリングアプリと相性が悪いものもある
- 多くの開発環境は無料になったとはいえ、まだまだ環境を整えるのは一人では難しい
とまあパソコンだけをとっても、「子どもがプログラミングに興味を持ってるから…。私は機械弱くて何もわからないんだけど」ではさすがに通らない事情があります。
そのほかにも、いくら一人の子がプログラミングを覚えたとしても、周りにその力を発揮できる場所がなければ、成長できませんし、プログラミングの話が出来る知り合いもできないまま。
誰もが東京などの勉強会や、最近多いCoderDojoなどに気軽にアクセスできるわけではない。まずは子どもの前に、大人がプログラマがその場にいられる環境を作る必要があると思うのです。
そしてそれは将来的な話もあります。今のまま、今の子どもが大きくなって、就職するとなったとき、そのときの会社の上司は恐らく今の親世代ではないでしょうか。
その人たちがプログラミングに理解を示せなかったら、誰がプログラマの能力をしっかりと判断し、評価できるのでしょう?
プログラミングは複雑なものです。誰もがその中枢まで理解しなければならない というものではない。
しかし「そういうものが世の中にあり、こういう仕組みで成り立っている」ということだけは万人が知っておかなければいけないことではないか と思います。そのために、今回のようなイベント開催となりました。
子ども向けプログラミング教育の場を広げよう という動き
ところで最近は、子ども向けプログラミング教育の場を広げよう という動きが盛んです。
地域の方々にもこのようなものに敏感な方は少なくなく、子ども向けにプログラミングワークショップをやって欲しい なんて声はよくあります。事前情報なく「これからはプログラミングが学校教育にも入ってくる」と言う情報だけがあればそうなるのは仕方がないことでしょう。
しかし、個人的にはこの流れに危機感を持っています。
先の通り、プログラミングは「子どもだけが知っていればよい」というものではありません。だからこそこうやって子ども向けプログラミング教育だけが先行し、親や周りの人々が「十分なことをやった気になってしまう」のがとても怖い。
それに、今もそうであるように、プログラマはプログラマだけで集まりがちです。もちろん場所によってはそうでないところもあるようですが、プログラマのコミュニティにはなかなか非プログラマは入れませんし、情報も得られません。
このままではプログラマとそうでない人の溝がさらに深くなってしまう。
そうなると、大人になってからプログラミングに興味を持った人はどこに行けばいいのか?プログラマのコミュニティに入るほどスキルの無いようなプログラマは、どこにいけばいいのか。
そうならないためにも、もっともっと「子ども向けでない」プログラミング学習の場が必要なのではないか。
親向けのプログラミングスペースを作るのは、難しいかもしれない。収益性も上げられないかもしれないし、なにより流行りではありません。
でもだからこそ、せめてNPOなら、それをやれるんじゃないか。親も子もプログラミングというものを理解することで、その上で見えるものも考えられるのではないか と思います。
「何か」を学びに活かすために必要なもの
それに、プログラミングに限らず、何かを学びに最大限活かすためには、親なり地域の誰かなり、お手本となり、かつ気軽に話が出来る立場の人が必要だと思います。
プログラミングは、面白いもので、学校で学ぶ科目のほぼ全てになんらかの形で関わっている。
はじめのころは確かに何のスキルも必要ないですが・・・。
- 複雑なアニメーション・人工知能などを活用したデータ処理には高度な数学の知識が必要
- チームプログラミングの際、他人に分かりやすく意見を伝えたり、他人の意見をしっかり受け取るためには、それなりの国語力が必要
- より人間に使いやすく、自然なアプリケーションを作るためには社会や理科の知識も必要
- 膨大な英語のドキュメントを読むためにはそこそこの英語力だって必要
ただそれを、学校の授業とうまく結びつけるためには、身近な大人の助けが必要なのかなと。
例えばわたしは、ゲームが好きです。ゲームを通して色々なものを学び、知識を得てきたと思っています。それは考え方であったり、工夫する力であったり、根気であったりと言語化が難しいスキルも多い。
ただそれは、ゲームの知識、腕前、多くの面で自分の先を行く母がそばにいたからだと思っています。
目指すべき目標として母がいたから、母にゲームのやり方やコツについて教わり、それを目標としたからこそ、いろいろなスキルを得られたのだと思います。
同じように、プログラミングであっても、目標とする人がいて、その人から多くのことを学べる環境がないと、それを他の分野の学習に活かすことができないのではないか。
逆に言えば、プログラミングについて、目標とする人と気軽に話せる環境があれば、プログラミングを通して、より多くの知識・スキルを得ることが出来るのではないか。
だからこそ、子どもにとって一番身近な大人である、親がプログラミングについて理解し、可能ならプログラミングをできるようになることが、子どもの成長にとってよりよいのではないか と思うのです。
そんな今だからこそ、プログラミングを理解しよう
今は、コンピューターで出来ることがとにかく多くなりました。地図を使ったナビゲーションも、簡単な電話応対も、ある程度の意思決定支援ですらコンピューターで可能です。
現状人間が仕事としてやっているそのような単純作業のうち、いくつかはコンピューターが代替するようになると言われています。
だからこそ、コンピューターを敵対視している人もいることでしょう。
しかし、コンピューターは、これからの時代仕事を奪う敵であり、同じ業界でしのぎを削るライバルであると同時に、自分に出来ないこと、(身体的な障害などにより)出来なくなってしまったことを代行してくれる仲間でもあるのです。
その仲間を理解するためにも、プログラミングを理解することから、はじめてみませんか。別にプログラマになれとは言わないので。
今回のようなイベントが、そのためのきっかけの一つとなればと思います。